研究概要 |
細胞内情報伝達に関わる分子が集中し,血管内皮細胞の諸機能の結節点となっているカベオラの細胞生物学的な特性について研究を行った.今年度はカベオラの主要な構成成分であるカベオリン-1のアイソフォーム(α,β)の分子的性質を明らかにする目的で,既知のカベオリン分子を発現せず,カベオラを持たない培養細胞にカベオリン-1のcDNAを導入し,カベオラ形成の有無、頻度,形状などについて検索した.昨年度までの研究により,内在性にカベオリン-1を発現する細胞においては,深い陥凹と浅い陥凹でα対βの比率が異なることを見出している.外来性にαのみ,βのみ,あるいはαとβの両方を発現させたところ,αのみを導入した場合に最も高頻度にカベオラが形成され,αとβの両方を導入した場合がそれに継ぎ,βのみを導入した場合にはほとんどカベオラができなかった.またいずれの場合にも深い陥凹の頻度は低く,ほとんどが浅い陥凹であった.これらの結果はカベオリン-1のアイソフォームには陥凹形成能の点で差異があることを示し,また深い陥凹と浅い陥凹の分子的組成が異なる可能性を示唆する.また,これまでに報告されてきた種々のカベオラ精製法や観察法では,深い陥凹と浅い陥凹を同じ効率で同定できていないと考えられる.カベオラの陥凹度はコーテッドピットとは異なる機序で制御されている可能性があり,カベオラの形態変化や小胞化に関する従来の仮説について再検討する必要があると考えられた.
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