研究概要 |
細胞核のイメージングは,蛍光抗体染色において標識の局在を示すのに重要である.今回はクリプトン・アルゴンレーザーを用いた共焦点顕微鏡法において,緑,赤,ファーレッドの三つのチャンネルによる情報の取り込みにおける核の対比染色の条件について検討を加えた.ゲル電気泳動した核酸を高感度で検出するための蛍光色素が近年開発されてきている.そこで,これらの色素が共焦点レーザー顕微鏡において使用可能であるかどうかを,ゲル標本モデル,培養細胞標本,組織切片標本を用いて検討を加えた.特に蛍光強度,DNA特異性,チャンネル間での分離特性,退色特性などに注目した.その結果,緑の蛍光色素としてはSYBR Green I,SYTOX Green,Pico Greenが,赤の蛍光色素としてはYO-PRO-3やPIが,ファーレッドの蛍光色素としてはTO-PRO-3が優れた性質を持っていることが明らかとなった.特にTO-PRO-3は退色防止剤を用いることによりFITC,ロ-ダミンなどとの三重染色の観察においてきわめて有効であった.次に細胞の基底側壁部に局在すると考えられるNa^+依存ミオイノシトール輸送体SMITに対する抗体の作製を試みた.コンピューターによるアミノ酸配列の分析から部分ペプチドを合成し,ウサギを免役した.現在までのところ満足のいく抗体は得られてはいない.この過程でSMITの部分ペプチドと同じアミノ酸配列をそのC末に持つ水チャンネル分子のアクアポリン3(AQP3)の抗体を得た.現在AQPファミリーについても合成ペプチドを用いてアイソフォーム特異的な抗体を作製中である.また,ミクロインジェクション装置を用いて細胞質内にマーカー色素、細胞核内に遺伝子を注入するためのセットアップを継続中である.
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