研究概要 |
本研究は、免疫抑制薬の標的としてのカルシニューリンに注目し、細胞増殖にカルシニューリン活性を必要とする分裂酵母変異体を利用して、カルシニューリン活性をin vivoにおいて特異的に抑制する免疫抑制薬の、簡単かつ確実なスクリーニング系を確立する事を目的としている。この目的は平成10年度に完成したので、平成11年度は以下に記したように、MAPキナーゼ抑制薬のスクリーニング系を確立した。 カルシニューリン破壊株はクロライドイオン超感受性を示し,0.15MのMgCl2添加により増殖不能となる。高発現ベクターに構築した遺伝子ライブラリーをスクリーニングし,高発現した場合にカルシニューリン破壊株が0.15MのMgCl2存在下で生育可能となる遺伝子をいくつか単離した。これらはすべてMAPキナーゼ系の抑制因子をコードしていた。また,カルシニューリン破壊株において,MAPキナーゼPmk1をコードする遺伝子を破壊した2重破壊株は,クロライドイオンに対する抵抗性を回復した。これらの結果は,カルシニューリン破壊株において,何らかの理由でMAPキナーゼ系が阻害されると,0.15MのMgCl2存在下でも生育可能となることを示している。 スクリーニングは,カルシニューリン破壊株を試験薬物と0.15MのMgCl2存在下で培養し,細胞の増殖を吸光度でモニターすることで行なわれる。薬物がMAPキナーゼ系を抑制しなければ,細胞は増殖しない。薬物が細胞膜を透過し,MAPキナーゼ系を特異的に抑制して初めて細胞は増殖する。通常は,薬物は非特異的に細胞増殖を抑制するので,特異性の高いスクリーニング法である。また,インビトロのスクリーニングで得られた薬物で,しばしば問題となる細胞膜の透過性についてもはじめからクリアしている。
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