Rho低分子量G蛋白質とその関連蛋白質の機能修飾物質のスクリーニング系の開発

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09557011
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 田中 一馬 北海道大学, 医学部, 教授 (60188290)
• 研究分担者: 佐々木 卓也 大阪大学, 医学部, 助手 (40241278)
• キーワード: 出芽酵母 / 低分子量GTP結合蛋白質 / Rho / アクチン細胞骨格 / スクリーニング法 / 細胞壁

研究概要

Rhoを介するシグナル伝達経路の異常が、がん細胞の浸潤や転移において重要な役割を果たしている可能性が出てきている。一方、薬剤のスクリーニング系の開発には、培養が比較的簡単である微生物が有用である。本研究では、出芽酵母のRhoとこの関連蛋白質の遺伝子変異株を用いて、あるいは、出芽酵母において動物細胞のRhoとその間連蛋白質の遺伝子の発現系を構築し、Rhoとその間連蛋白質の機能修飾物質のスクリーニンング系を開発する。これらの目的を達成するためには、Rhoの活性制御機構と作用機構を明らかにすることが重要であり、本年度は昨年度に引き続き以下の成果を得た。
(1) Rho作用機構と新しいRho関連蛋白質の単離:Rho4の標的蛋白質であるBNR1が、新規の蛋白質HOF1に直接結合することを明らかにした。HOF1はSH3ドメインを有し、その変異株は細胞質分裂異常を示す。従って、BNR1はHOF1を介して細胞質分裂を制御することが示唆された。事実、BNR1もHOF1も細胞質分裂部位に局在することが明らかとなった。一方、BNI1の局在に関与するSPA2蛋白質と相互作用する新しい蛋白質を検索し、セプチンファミリーに属するSHS1蛋白質を得た。SHS1遺伝子の変異株は、他のセプチン遺伝子変異株同様、細胞質分裂異常を示した。
(2) 酵母における、Rho関連の動物遺伝子発現系の構築:昨年度に引き続き、Rho関連の動物遺伝子であるRhoA、RhoGDI、hDia等々を酵母細胞に発現させる系を開発した。これらの遺伝子発現系では酵母細胞の増殖が阻止され、この増殖阻止を指標にして新しい薬剤のスクリーニング系の開発が可能であることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Fujiwara,T.: "Rho1p-Bni1p-Spa2p interactions: Implication in localization of Bni1p at the bud site and regulation of the actin cytoskeleton in Saccharomyces cerevisiae." Mol.Biol.Cell.9. 1221-1233 (1998)
• [文献書誌] Umikawa,M.: "Interaction of Rho1p target Bni1p with F-actin-bindng elongation factor 1alfa: implication in Rho1p-regulated rcorganization of the actin cytoskeleton in Saccharomyces cerevisiae." Oncogene.16. 2011-2016 (1998)
• [文献書誌] Tanaka,K.: "Control of rcorganization of the actin cytoskeleton by Rho family small GTP-binding proteins in yeast." Curr.Opin.Cell Biol.10・1. 112-116 (1998)
• [文献書誌] Asakura,T.: "Isolation and cbaracterization of a novel actin filament-binding protein from Saccharomyces cerevisiae." Oncogene.16・1. 121-130 (1998)
• [文献書誌] Kamei,T.: "Interaction of Bur1p with a novel Src homology 3 domain-containing Hof1p." J.Biol.Chem.273・43. 28341-28345 (1998)
• [文献書誌] Imamura,H.: "Rho and Rab Small G Proteins Coordinately Reorganize Stress Fibers and Focal Adhesions in MDCK Cells" Molecular Biology of the Cell.9. 2561-2575 (1998)