本研究においては遺伝子に生じた質的及び量的異常をゲノム全体を対象として高速にスキャニングする技術を開発し、変異遺伝子同定への応用を試みた. 1. ゲノムスキャニング法の開発 (1) DNAにおけるゲノム変異領域の同定と解析 RDA(Representational Difference Analysis)法により癌細胞DNAにおいて特異的に欠失している領域からDNAマーカーを増幅、同定した.癌細胞DNAをドライバーに用いることにより、ホモ欠失しているゲノム領域からのDNA断片を増幅できた。 (2) スクリーニング用高密度フィルターの作成 PCRにより増幅可能な制限酵素断片を予めライブラリー化し、全ゲノムをカバーすることをめざす。独立した3万個の100kb毎に1個のマーカー密度が得られる。マクロあるいはミクロアレーを作成することにより、スクリーニングの高速、簡便化を図る。BglIIにて切断後、アダプターを付加し、増幅したアンブリコンをインサートとするプラスミドライブラリーを作成し、既存のプローブにより現在そのrepresentationについて検討を加えている。 (3) Representationによるグノムライブラリースクリーニング法の開発 上記(1)で得られたBglIIによるミニライブラリーを利用して、アンプリコンに含まれるか否かをサブトラクションなしに判定することが可能であることを検討している。 (4) 単塩基変異(SNP)の検出方への応用 アンブリコンに含まれるか否かは使用する制限酵素の多型を反映する。上記(3)のライブラリースクリーニング法はゲノムワイドのSNP解析に応用可能であり、検討を加えている。 2. RNA発現量の比較スキャニング法の開発 ゲノムサイエンスの進展により、既に数万個のcDNAが同定され、その機能解析がより重要となりつつある。cDNA-RDA法による遺伝子発現レベルの比較検討に加えて、cDNAアレイによるより体系的な発現解析システムを導入しつつあり、その結果の比較検討を行うインターフェースづくりを行っている。
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