研究概要 |
破骨細胞形成において骨芽細胞系の果たす役割は、l)骨髄造血系細胞〜破骨細胞系の増殖に必要な液性因子の供給、2)破骨細胞への最終分化に不可欠な直接接触を介する相互作用、の2段階が想定される。私どもは破骨細胞形成機構の詳細を検討する上で、後者の観点より骨髄単核細胞との共存培養におけるST2細胞の破骨細胞形成支持能の推移(継代数依存的)に着目し、Difrerential Display法にて破骨細胞形成能と連動して発現の推移する分子の分離を目指した。 1998年破骨細胞分化因子が分離同定されたが(RANKL/TRANCE/OPGL/ODF:H.Yasuda et al.,PNAS,D.Lacy et al.,Ce11,1998)、私どもはRANKL遺伝子5'上流プロモータ領域をクローニングし、破骨細胞分化因子(RANKL)遺伝子発現調節機序について検討した。特にST2細胞の継代数依存的な破骨細胞形成支持能がRANKL遺伝子の発現の有無によって既定されていることを明らかにし、その現象に遺伝子プロモータ領域のメチル化修飾が関与する可能性を見い出した。この成果の一部は既に投稿し論文印刷中である。さらに、骨組織における上記遺伝子の発現を形態学的に評価するために、硬組織を用いた組織分子雑種法の基礎的検討を行った。とりわけ組織上でのmRNAの保存に適した固定法・脱灰法の条件設定やPCRを利用した高感度・特異的なプローブ作製方法について多くの知見を集積し、現時点では脱灰骨標本を用いた組織分子雑種法にて骨形成因子(BMP)や血小板由来増殖因子(PDGF)の局在を示すことが可能となった。以上の成果の一部は第87回日本病理学会総会、第16回日本骨代謝学会、第20回米国骨代謝学会議にて報告した。
|