不整脈の原因において洞房結節の変化が占める割合は大きい。しかし、多数の結節細胞がお互いにどのように関与して一つのリズムが生まれてくるかなど洞房結節には未だ解決されていない問題が数多く残っている。それは多数の細胞が三次元的構造をもって配列し機能を営んでいる組織をそのまま生体に近い状態で観察する方法がこれまでなかったことに起因する。これを解決するため、従来のレーザ走査顕微鏡に生きた組織を通過しやすい近赤外域のレーザによる二光子励起を組み込み、これまで観察することが困難であった生きた組織をそのまま観察できる装置を作ることを本研究の目的とした。 以上の目的に沿って、高速性に優れたタンデム走査を採用し、ニポウデスクには明るさが求められるためマイクロレンズアレイを組み込んだものを使用した。蛍光は高感度イメージインテンシファイヤ付きのCCDカメラで捉えた。このシステムに近赤外域レーザによる二光子励起を組み込み、二光子励起や高速での観察適した蛍光プローブの選択と染色方法の開発、さらに効率の良い光路系の構築を検討した。二光子励起に用いたのはモードロック・チタニウム・サファイアパルスレーザである。また、効率よく励起される蛍光プローブの選択し負荷条件を検討した結果、ランゲンドルフ灌流した心臓の心室筋をこれまで以上に明るく染色することが可能となった。その結果、まだ十分な解像度は得られていないものの、心臓内における[Ca2^+]i動態をビデオレートで観察でき、カルシウム波が細胞内を伝播していく様子や興奮収縮連関時の[Ca2^+]i動態を捉えることができた。本研究が提案した方法によって、これまで困難であった厚い組織や細胞塊においても断層像がとれるようになり、洞房結節でのリズム生成をはじめ生命現象解明の基礎的技術を提供できた。
|