研究概要 |
16SリボソームRNAの配列は菌種の系統的な位置の決定には有用であるが, 分類学的にはこれでは種の鑑別が出来ない。これはリボソーム配列がまったく同じでも独立した菌種が存在することが報告されているからである。我々は遺伝学的に類似した菌種を含むレンサ球菌でこのことを証明し,これらの種を区別する方法として新しい全染色体のDNA/DNAハイブリッド形成実験と,種レベルで識別できる遺伝子を模索してきた。superoxide dismutase,DNA gyraseB,23SrRNAなどをターゲット遺伝子として選び,種の同定に利用できるかを検討した。23SrRNAは16SrRNAとほぼ同じ解像度で有り,superoxide dismutaseは種のなかの株を識別する方法として有効であった。DNA gyraseBはこの両者の中間的な存在で種を幾つかのグループに細分できた。 一方、分類学的な種の定義であるDNA/DNAハイブリッド法は菌種の同定方法としてますます重要になりつつある。従来の方法を液相でハイブリッド形成実験を行なうために,今年度は2本鎖DNAハイブリッドをモニターする蛍光モニターを購入し,サイバーグリーンで2本鎖のハイブリッド形成過程がモニターできることを証明した。毛細管のなかでハイブリッドを形成させ,実験する方法はこれまでの方法に比べDNAの量が微量でよいため,一般化される可能性が高く,今後は国際的な標準化を目指して,残り1年間で基本データの蓄積を行なう予定でいる。また蛍光チャピラリー増幅方法は増幅時間が10分と短いことから病原体の迅速同定システムにも応用できることから感染症の迅速診断の道が開けると期待している。
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