研究概要 |
造血幹細胞は,先ず赤白血球,T細胞,B細胞などいろいろの細胞系列へ分化決定され,それら系列特異的前駆細胞から機能細胞が分化生成する.しかし,従来は,系列決定の過程を解析する方法は無かった.われわれはmultilinage progenitor (MLP) assay system(MLP法)と呼んでいるT,Bおよびミエロイド細胞への分化を解析する方法を確立し,造血の初期過程を詳しく研究している.本年度の研究によって下記のことが明らかとなった. 1)マウス胎仔肝臓中には,すべての系列へ分化する多能前駆細胞(p-Multi)の他に,T系列(p-T),B系列(p-B)あるいはミエロイド系列(p-M)に決定された前駆細胞が存在する.さらに,ミエロイドT細胞へ分化する前駆細胞(p-MT)と,ミエロイドとB細胞へ分化するもの(p-MB)も存在する. 2)胎仔血液中にはp-Multiは存在せず,前駆細胞のほとんどは,p=T,p-B,p-Mであり,少数のp-MTも検出された. 3)p-Multiを強制的に胸腺へ移入するとT細胞の他に多数のB,エミロイド細胞をつくる. 4)胎仔胸腺中の前駆細胞のほとんどはp-Tであり,少数のp-Bとp-Mを含んでいる. 以上の研究結果から,胎仔期に胸腺へ移行してT細胞をつくるのはp-Tであり,p-Multiではないと結論した. MLP法を胎仔肝臓や胎仔胸腺以外の前駆細胞の解析へ応用することも試みている.先ず,FLより先に造血が始まるとされるAGM(Aorta-Gonads-Mesonephros)領域の前駆細胞について検討し,MLP培養系へ加えるべきサイトカインを種々検討した.その結果,1L-3の代わりにGM-CSFを用いることで,AGM前駆細胞のMLP解析が可能となった.
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