研究概要 |
有機溶剤作業において防毒マスクを使用する場合,吸収缶の寿命(破過時間)を知ることがきわめて重要であるが,破過時間は使用条件によって大きく異なるので,事前に推定することは困難である.本研究では,半導体ガスセンサーを吸収缶またはマスクの面体に埋め込むことにより、破過が近づくと警報を発し,吸収缶の交換時期を知ることができる安全かつ実用的な防毒マスクを開発,試作することを目的とした. 昨年度に引き続き,有機溶剤蒸気を防毒マスク吸収缶に通じ,下流側の蒸気濃度をガスクロマトグラフ(GC,島津製作所,GC-17)で経時的に測定することにより,破過曲線を得るとともに,吸収缶の下流側に挿入した有機ガス用半導体ガスセンサー(サイマレック社)からの出力信号をICカードに連続的に記録し,両者の信号を比較検討した.芳香族炭化水素類,アルコール類,ケトン類,塩化炭化水素類,酢酸エステル類など有機溶剤中毒予防規則で規定されている多くの溶剤について検討した結果,大部分の有機溶剤蒸気については,GCで破過を検出するとほぼ同時か,やや早い時間にセンサーは反応していることがわかった.このことから,本センサーは,有機ガス用防毒マスク吸収缶の破過の検出器として利用可能であると考えられた.そこで,センサーを防毒マスクの内面に取り付けるとともに,センサーが破過を検出すると音と光で警報を発する装置を試作し,使用中に破過が検出できる条件設定を行った.その結果,本装置は多くの有機溶剤蒸気について破過の検出が可能であることが確認された.ただし,現在のセンサーは消費電力が大きく,電池の消耗が早いため,長時間の使用には問題が残されている.したがって,感度を落とさずに,消費電力を小さくすることが今後の課題として残された.
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