スルファチド結合性アドヘシンの同定のためヘパリンセファロースならびに硫酸セルロファイン結合性のHP由来蛋白をSDS-PAGEにより分析し、主要な蛋白の部分アミノ酸配列を決定したが、ウレアーゼの触媒ユニット、細菌性熱ショック蛋白(HSP)、以前アドヘシンとされたがその後細菌性フェリチンと同定された19Kd蛋白など既知の蛋白も含まれており、これら硫酸基含有糖化合物によるアフィニティクロマトグラフィーも必ずしも特異性は十分でないと考えられた。ウレアーゼはその遺伝子欠損株も接着性に影響がないことが明らかにされているので、アドヘシンとしては除外される。最近カナダの研究者がHPの第一段階の接着にHSPによるスルファチド結合が関与している可能性を報告したこと、非特異的に菌体表面に存在する可能性があることなどから、その遺伝子全長をクローニングを行った。一方この段階では、アミノ酸配列が明らかになっていない蛋白が同定されたので、これらについてdegenerated primerを設計しPCRクローニングを開始したが、HPの全ゲノム構造が米国の研究者から報告され(Nature388、539-547、1997)たので、遺伝子バンクに登録されたこれらのHP遺伝子を検索するとそれまで未知であった一つは、新たに登録されたHPのpyruvate dehydrogenaseのアミノ酸配列に一致していた。しかしこれは細胞内の酵素であり、アドヘシンとしての機能はないと判断しクローニングは中止した。もう一つは「機能不明の蛋白」として登録されているものと配列が一致しており、現在クローニングを行っている。
|