ヒト型プリオン蛋白の遺伝子導入を行ったマウスは、従来の野生型マウスと比較して100万倍の感度を持つことが明らかになったが、この感受性に関して導入した遺伝子の発現量での比較と、さまざまな症例で比較検討を行った。まず、発現量に関しては、野生型のマウスのプリオン蛋白の発現量に対して0.6倍、1.2倍、2倍、4倍、8倍、16倍とトランスジェニックマウスの系統によってさまざまな発現量を示す系統で比較した。最も感受性の高かったのは、0.6倍と1.2倍という野生型の発現量に相当するトランスジェニックマウスで、2倍、4倍、8倍、16倍と発現量が増すにつれて潜伏期間は延長する傾向にあった。8倍、16倍のマウスでは、260日を経過しても発病しないマウスが存在し、過剰発現によってかえって感受性が低下するという結果となった。一方、プリオン病の症例による検討では、新たにコドン129Met/Metの孤発例のCJD症例2例、コドン129Val/Metの孤発例のCJD症例2例、コドン129Met/Metの硬膜例1例、コドン129Met/Metの硬膜例で英国の新変異型に類似のアミロイド斑を有する症例2例の検討を行った。孤発例では、コドン129Met/Met症例、Val/Metの1例は従来同様150日前後で発病し、コドンVal/Metのもう1例は経過観察中である。硬膜例で古典型のCJDも150日前後で発病しているが、硬膜例の特殊型では、300日を越えても発病が見られていない。硬膜例の中には、孤発例CJDとは異なる一群が病理像だけでなく、感染性の面からも存在することが明らかになった。
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