オステオポンチンは骨形成における骨芽細胞、破骨細胞の動員や、Ca代謝に関与する蛋白質である。この蛋白質は母乳、胎盤、白血球、腎臓、脳、血管はもとより癌細胞にも広く分布する接着分子であることから、本蛋白質の生物学的機能を解明する事を目的として、母乳や血清、白血球の本蛋白質の精製と解析を試みた。 昨年度は、人母乳から母乳オステオポンチンを同定・精製するとともに、抗母乳オステオポンチン抗体を作製した。本年度はその抗体を用いてオステオポンチンの免疫化学的性格を検討し、以下の結果を得た。 1) 精製母乳オステオポンチンは78kDを主体とする分子であるが、小さな分子のfragmentをほぼ50%に含む分子分の集合であった。2)抗体を指標として、血清のオステオポンチンの同定を試みたが、Western blot法では50kD以下の小分子分画に複数の抗体反応物質として同定はできたが、沈降反応や抗体固相化EIA法では反応物質の存在は確認できなかった。ただし、血清の蛋白はEIAや沈降反応による母乳オステオポンチンと抗体の反応を阻害する活性を有していた。3)血清に見られるオステオポンチン様物質は、保存で容易に小さな分子に分解され、その分解は通常の蛋白分解酵素阻害剤の添加では抑制できなかった。 母乳中のオステオポンチンは、比較的不安定な分子として分離同定できるが、血清中のオステオボンチン相当物質は、分子的に非常に不安定で、容易に自己分解して小分子に転換する性格があることが示された。この両者がともに同一の遺伝子産物とすると、何故組織によってその性質が異なるかは興味ある命題である。一方、オステオポンチンの易分解性が何に起因するかは今のところ不明であるが、この易分解性に何らかの生物学的意義がある可能性が考えられる。
|