研究概要 |
増殖因子・分化誘導因子を用いて膵β細胞の再生を促進する方法を確立することを目的としている。このためにまず膵β細胞の分化を促進する分化誘導因子を同定した。この目的のために膵共通前駆細胞と類似した特徴をもつAR42J細胞を用い,この細胞をインスリン産生細胞へと分化させられる因子を同定した。このアッセイ系ではEGFファミリーに属するベータセルリンが同定された。またベータセルリンと同程度の分化誘導作用をもつものとして肝細胞増殖因子(HGF)が同定された。そこでこれらの因子がin vivoでβ細胞の再生,新生を促進するかどうかをラットの膵再生モデルを用いて検討した。膵再生モデルとしては90%膵切除ラットを用いた。90%膵切除の後に,ベータセルリンを腹腔内に連続投与すると,ベータセルリン投与ラットにおいてはコントロールラットに比較して著明な膵内分泌細胞の再生像が観察され,新たに形成された新生ランゲルハンス島が多数観察された。とくに膵導管には内分泌細胞へと分化していく細胞のマーカーであるPDX-1陽性の細胞が多数観察され,ベータセルリンによって膵導管が分化していることが推測された。
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