研究課題/領域番号 |
09557080
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中尾 一和 京都大学, 医学研究科, 教授 (00172263)
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研究分担者 |
藤沢 幸夫 武田薬品, 創薬研究本部, 主任研究員
小川 佳宏 京都大学, 医学研究科, 助手 (70291424)
細田 公則 京都大学, 人間・環境学研究科, 助手 (40271598)
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キーワード | レプチン / トランスジェニックマウス / 肥満 / 摂食調節 / エネルギー消費 / 白色脂肪 / インスリン感受性 / やせ |
研究概要 |
【目的】エネルギー代謝調節系は摂食調節系とエネルギー消費調節系より成る。肥満はエネルギー代謝調節系の破綻により生ずるので、肥満の分子機構の解明には、摂食調節系とエネルギー消費調節系の研究が重要である。レプチンは摂食調節系の主要な分子で、視床下部を介して摂食を抑制するが、我々のグループなどの成績より遺伝性肥満のob/obマウス、db/dbマウス、Zucker肥満ラット、Koletsky肥満ラットでレプチン遺伝子またはレプチン受容体遺伝子の遺伝子異常が肥満の原因となっていることが明らかにされている。またレプチン遺伝子に異常のない肥満モデル動物やヒトの肥満で、レプチンの遺伝子発現、および血中レプチン濃度が上昇すること、また血中レプチン濃度を上昇させる因子としてグルココルチコイドなど、低下させる因子として絶食や交感神経系活性化などが明らかになっている。本研究では、レプチン遺伝子過剰発現トランスジェニックマウスを作製した。 【研究方法】マウスレプチン遺伝子を肝細胞特異的なSerum amyloid component Pのプロモーターで過剰発現させるベクターを作製し、BDF1マウスの受精卵にマイクロインジェクトし、トランスジェニックマウスを得た。 【研究結果】レプチン過剰発現トランスジェニックマウスの血中レプチン濃度は約100ng/mlと対照マウスの約10倍であり、その体重は対照ラットの約70%であり、また白色脂肪組織と褐色脂肪組織の大半が欠如した″fatless mouse″であった。また、IPGTTやITTによる検討で、インスリン感受性の増加が観察された。さらに体温の1.5-2℃の上昇、また収縮期血圧の有意な上昇(119.2±2.3vs.102.6±2.6mmHg,P<0.001)が認められた。 【結論と考察】対照マウスの血中レプチン濃度の約10倍の濃度を示すレプチン過剰発現トランスジェニックマウスの作製に成功した。このトランスジェニックマウスは対照マウスの約70%の体重であり、脂肪組織の欠如したfatless mouseであった。また、体温の上昇から、レプチンがエネルギー消費増加作用を示すことが明らかになった。さらにレプチンの昇圧作用が明らかになった。レプチン過剰発現トランスジェニックマウスは、今後、レプチンの長期慢性作用の検討に有用と考えられ、また、やせのモデル動物である。
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