研究概要 |
細胞内でHIVを不活化するハンマーヘッド型リボザイムを開発する試みを続けている。細胞内のendnucleaseとribonucleaseへの抵抗性を高める為に、stemI,II,IIIにチオ化DNAを導入し、活性部位のU7をA7に変換したキメラ型安定化リボザイムを作成した。その標的として、HXB2株のV3loopにいくつかの切断可能箇所を発見した。全てがRNAの野生型リボザイムは全ての切断部位に対して切断活性を持ったが安定化リボザイムの最も効率のよい切断活性は保存領域(GUA,7110-7112)に対するものであった。T細胞好性ばかりでなくマクロファージ好性ウイルスRNAも検討した。T細胞好性株HXB2,SF2とマクロファージ好性株SF162のenvのV3領域のRNAを試験管内で合成し、リボザイムの切断効果を検討した。またenvelope遺伝子不活性化NL432にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだものと上記のウイルスのenvelope遺伝子を共導入することにより偽ウイルス粒子を得ることができるが、リボザイムの抗envelope効果を検索する為に、この偽ウイルスの感染力についても検討を加えた。結果を見るとリボザイムの切断効率は標的ウイルスで異なり、HXB2のV3 loop RNAは最も効率よく切断された。SF2は切断部位の近傍で、SF162は下流のflanking sequenceの末端が、1塩基異なっている。効率はある程度低下したが、これらの合成RNAも切断された。リボザイムを導入したCHO-WT細胞では導入後2時間でenvの発現量が減少した。また偽ウイルス粒子によるルシフェラーゼ活性はリボザイム処理により低下した。最後にCD4とCCR5またはCXCR4を発現している細胞を用いて本リボザイムのT細胞好性株HXB2とマクロファージ好性株SF162ウイルスによる感染に対する効果にも抑制傾向が見られた。これらの結果より、V3 loopに対するリボザイムはHIVの感染に対する阻止効果があることが明らかになった。
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