研究概要 |
要約 心拍変動の周波数解析と自律神経系の関係は、交感神経を主体にした自律神経系調節に関与する0.1Hzを中心とするLF領域(low frequency component)と副交感神経系を主体にした自律神経系により調節を受けている3Hz付近を中心とするHF領域(High frequency component)が成人、新生児などで詳しく調べられている。また、これらの周波数帯域が時間的に変動する事が分かりはじめ、自律神経の非線形調節機構との関連が指摘されている。特に成人のHF領域の時間的変動の振幅の頻度分布はガンマ分布をとることが指摘されている。ここでは、胎児心拍周波数成分のLF傾域に着目し、時間周波数解析法の一つであるウェーブレット変換を用いその時間変動を調べ、胎児期の妊娠17週から、ガンマ分布が成り立つことを調べた。このガンマ分布のパラメータ値νは1.6であり,これは、週数、観測時間に関係せず、ほぼ一定であった。νの値は重傷胎児仮死時優位に低下した。一方、LF領域変動の振幅の最多頻度値は、妊娠週数とともに増加した。また、妊娠26週から34週では、正常群、低酸素群、重傷胎児仮死であるアシデミア群の順で有意に低下し、これらが、若妊娠週数での新しい胎児仮死のモニターの計量的指標となる可能性が示された。
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