研究課題
癌の化学療法を実施するにあたり、薬剤の効果を上げるために数種の抗癌剤を複合投与するのが一般的である。このような抗癌剤の複合投与が一方で癌治療における多剤薬害として大きな社会問題になってきている。たとえば抗癌剤による副作用の問題、また医療保険システムの崩壊等枚挙に暇がない。この多剤薬害をさけるためには、正確で簡便な癌薬剤感受性の確立が必須である。そこで我々は癌薬剤感受性として全く新しい酸素電極による溶存酸素測定法を考案し、本補助金の申請をした。すなわち、癌細胞の入った密封された培養液中の溶存酸素量を酸素電極で計測すれば、癌細胞のactivityが高ければ高いほどすなわち抗癌剤の効果がなければないほど酸素の消費量が大きく、逆に抗癌剤の効果があればあるほど癌細胞の酸素消費量は減少し、短時間(1時間以内)で癌薬剤感受性の判定が可能であるはずと考えた。この考え方に基づき、本補助金にて平成9年度、10チャンネルの溶存酸素測定装置(ダイキン工業(株)DOX10)を作製した。この装置を用いて、手術で摘出されたヒト胃癌組織あるいは白血病細胞(HL-60)に対する種々の抗癌剤の薬剤感受性試験を行い、さらに従来法であるコロニー法並びにMTT法との比較を行った。その結果、溶存酸素測定装置を用いて短時間で得た癌薬剤感受性試験結果と従来法による癌薬剤効果判定とはほぼ一致する結果を得た。更に平成10年度、この電極の特徴を生かし96穴マイクロプレートの底部に電極を埋め込んだ多チャンネルタイプの酸素電極を作製した(ダイキン工業(株)DOX96)。多チャンネル化したことにより臨床評価が可能となったので、次年度最適な抗癌剤の選択、それらの至適濃度の選択を一括して短時間で行なえるプロトコールを作製する予定である。
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