研究概要 |
平成9年度の手指の皮膚血流量測定,前腕の運動時の筋血流量測定に引き続き,平成10年度には前腕において皮膚と筋の血流量が分離測定できることを証明するために,実験を行った.前腕全体を加温し主に皮膚血流量を増加させる実験では,前腕全体の血流量を測定するラバーストレンゲージ法(RSG法)と近赤外線分光法(NIRS法)ではR=0、61と有意な正の相関関係が認められた.しかし,同一の被検者内での良好な相関に比較し,全体での線形性が失われるため,実験系の再構築を行った.すなわち,加温に伴うラバーストレンゲージの伸張に伴う誤差が無視できないこと,皮膚の血流を増加させるために必要な加温が大きく筋血流量まで増加することが判明したためである.上腕の冷却,血管収縮薬の局所投与は皮膚血流量の変化が少なく本研究には不十分の負荷方法であった.血管拡張物質であるmethyl nicotinateを局所投与すると皮膚より吸収され,主に皮膚の血流量を増加させるため,本薬剤を前腕全体に噴霧し前腕の皮膚血流量を増加させる実験を行った.この薬剤に対する反応は個人差が強く解析可能であった4名の内1名ではR=0.84と極めて良好な線形性がNIRS法とRSG法の間に認められた.ただし,加温実験と同様全体としての線形性は失われるため,局所の血流量測定法であるNIRS法を前腕を円筒形モデルに当てはめ,前腕全体の皮膚・筋血流量に換算することで線形性の改善を図るべく実験データの解析中である.なお,本年度予定した酸素トレーサー法による血流量の測定は,健常人では動脈血酸素飽和度が酸素投与前で100%に近く,酸素投与のみでは酸素がトレーサーとなり得ないことが判明した.
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