研究概要 |
本研究の目的は,皮膚と筋肉の血流量を分離して、しかも絶対値で測定する事である。平成9年度においては、近赤外線分光法(NIRS)と、mercury-in-rubber-straingauge(RSG)を用いてvenous occlusion法により四肢血流量を測定する方法とを組みあわせる事により、まず手指の血流量、即ち皮膚血流量を10名の健常被験者において測定し、NIRSとRSG法の間にR^2=0.90と良好な線形性を認めた。続いて前腕においてNIRSとRSG法を併用し前腕筋に運動負荷を加える事により、筋血流量測定を5名の健常被験者で行った。その結果、NIRSとRSG法の間にはR^2=0.67の良い相関性を認めた。即ち、NIRSによる筋血流量とRSG法による前腕血流量とが良く相関した。 平成10年度には前腕において皮膚と筋肉の血流量が分離測定出来る事を証明する実験を行った。まず5名の被験者で非測定側の手を4℃の冷水に5分間浸し、その間の皮膚と筋血流量をNIRSの皮膚用と筋肉用のプローベで、また前腕全体の血流量をRSG法で同時に測定した。しかし冷水負荷により皮膚だけでなく筋血流量も減少し,筋血流量のみの測定はできなかった。そこで前腕全体を箱の中に入れ前腕を加温して、同様に皮膚、筋肉、前腕全体の血流量変化を測定した。加温により全例で皮膚血流量は増加したが、増加量に個人差があり筋血流量も増加した例があった。さらに加温によりRSGの電気特性も変化した。 ついで血管拡張薬であるmethyl nicotinate溶液を10名の健常被験者の前腕に噴霧して皮膚血流量を増加させることにより、NIRSとRSG法の間には満足すべきデータが得られた。そこで本法を閉塞性動脈硬化症患者3名において、種々血行再建手術の前後や非手術肢で応用し皮膚、筋組織血流量を分離して測定した。薬物療法の効果判定にも応用可能であった。
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