研究課題
A)肝硬変モデルの作成;SDラットを用いて、Dimethylnitirosoamine(DMN)投与を行い、従来の四塩化炭疽投与モデルに比べて肝実質細胞細胞障害の少ないモデルの作成を行った。そのモデルにおける硬変肝の程度を組織学的ならびに血清ヒアルロンサン濃度で評価し、硬変肝モデルとして使用できることを確認した。B)肝硬変モデルを用いた切除後残存肝の線維化の抑制、および肝再生に関する検討:上記の如く作成したラット肝硬変モデルに対して70%肝切除を行い、その後の残存肝の変化を検討した。硬変肝切除後の生存率は約40%であった。平行して、肝線維化予防に効果があると報告されているHGFを、長期開門脈内に持続投与する目的で、実験Aで作成したモデルを用いて浸透圧持続注入ポンプを門脈の分枝に留置する実験系を作成した。今後薬剤および遺伝子治療の効果を検討する予定である。C)肝繊維化、細胞増殖抑制のシグナルについての検討:ラットの肝臓から、Kupffer細胞および伊東細胞を分離培養し、免疫染色(ED2)および超微形態の面からそれぞれを確認した。肝繊維化の状態におけるTGFβの新規シグナル伝達物質であるSmadの発現状態の検索、Smadの発現にKupffer細胞がどのように関与しているかは今後の課題として残された。D)正常肝におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた遺伝子治療の検討:分離したKupffer細胞にたいしてHVJ-Liposome法を用い、TNFのアンチセンスオリゴヌクレオチドの導入を行い、効率よくTNFのmRNAが抑制されることを確認した。Kupffer細胞と伊東細胞のco-cultureを行いサイトカイン、エントセリン、チロシンカイネース、MAPカイネースなど種々の伝達分質をブロックすることによって、伊東細胞による細胞外基質の消化のに関する検討は今後の課題として残った。