研究概要 |
われわれは切除不能胆管癌の効果的な集学的治療法の軸となる治療法として,養子癌免疫療法を考えている。胆管癌に率に発現する腺癌関連抗原MUC1とLAK細胞の細胞表面に存在するCD3,CD28を同時に認識する二つのBispeci antaibody(以下BsAb)を作製し,2者を併用することでin vitroの実験系およびSCIDマウスにヒト胆管癌細胞を移した治療モデルにおいて著明な抗腫瘍効果の増強を確認した(1996 : Cancer Research, 56 : 4205-4212)。このBsAb高い抗腫瘍効果を有するが,問題は,親抗体はhybridoma cellsをBALB/Cマウスの腹水で増殖させて回収し,精製し後に化学合成するために,必要十分量を安定供給することが困難な点にあった。また,化学合成したBsAbはF(ab)'2形のマウス抗体であり,臨床応用についてはその免疫原性と腫瘍集積性が問題となった。これらの点を解決するためにBsAbを微生物を用いて遣伝子工学的に作製することにした。今回の遣伝子工学的BsAbの作製には以下のような工程必要になる。すなわちBsAbと同様な作用をもたらす大腸菌より作製されるDiabodyを作製するには,それぞれの抗体可変領域のみのDNAをコードした一本鎖抗体(以下scFv)を作製し,これを組合わせることで作製する。具体的には(抗MUClscFv抗体の作製,(2)抗CD3scFv抗体の作製,(3)抗CD28scFv抗体の作製,(4)大腸菌によるSEA-scFv融蛋白の作製(5)Mx3,Mx28Diabodyの作製,(6)上記抗体による胆管癌細胞株TFK-1を用いたin vitroにおける抗腫瘍果の検討,(7)マウス皮下にTFk-1を移植した治療モデルにおける抗腫瘍効果の検討である。 平成9年度から平成11年度までの3年間に,東北大学工学部生物化学工学科・熊谷泉教授との共同研究において上記の6段階について検討が終了した。
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