研究概要 |
HVJリポソームとアデノウィルスベクターについて検討した。 1)HVJリポソーム(Lp)については、導入様式に各々特徴を有するとされている4種のLp(PS-Lp,PL-Lp,AVE-Lp,opDC-Lp)を用いた。導入ルートとしては脾を用い、遺伝子産物が門脈を介して肝に到達することを期待した。LacZ遺伝子を用いた検討ではHVJ-PS-Lp,HVJ-DC-Lpでは一回投与にて脾面積の約10%、3回投与にて約50%の領域に導入された。HVJ-AVE-LpとHNJ-opDC-Lpでは1回投与にて上記の3回投与と同程度の導入効率を認めた。 アデノウィルスベクターでは静注にても肝への導入効率は良好であった。ついでアデノウィルススペクターにVEGF遺伝子組み込み、肝冷保存、エンドキトシン血症における肝傷害の防止を目的として研究を行った。VEGFを用いた根拠は、上記二つの病態には肝類洞内皮細胞障害が関与しており、VEGFが類洞内皮細胞の維持に重要であるとの知見に基づいたものである。その結果、対照群に比べ類洞内皮細胞の電顕的形態が良好に維持され、肝障害も軽徴となることを明らかにした。 2)肝癌に対する治療 p35及びp45の遺伝子をタンダムにつないだIL-12遺伝子を上記方法にて脾内に注入し、門脈血中のIL-12蛋白レベルを測定中である。また、免疫遺伝子治療としてマウス樹状細胞にIL-12遺伝子を導入し、各種癌に対するワクチン療法を行っている。さらには、HSV-tkプロモーターのエンハンザー部分をp53認識配列に置換したプロモーターを作成しp53により制御され、変異p53にのみ選択的に遺伝子導入される系を開発中である。現在、in vitroの系ではあるがp53変異細胞に有意に強い効腫瘍効果をみている。
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