研究課題/領域番号 |
09557122
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鳥居 修平 名古屋大学, 医学部, 教授 (60115607)
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研究分担者 |
小出 幹夫 テルモ(株), 開発三課, 専門研究員
北川 泰雄 生物分子応答研究センター, 教授 (50101168)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 再構成基底膜 / 脂肪組織 / 線維芽細胞増殖因子 / 軟部結合織 |
研究概要 |
脂肪組織を形成している細胞は間葉系幹細胞の分化系列に属している。これらの前駆細胞は結合織に広く分布して臨機応変に既成の組織を更新、修復、代償する。この前駆細胞を任意の部位に誘導して増殖・分化させる手法は、軟部結合織の新しい再建術として重要である。結合織に大量に含まれる細胞外マトリックスは、各種コラーゲン、ラミニンやフィブロネクチンなどの糖タンパク質、高分子糖であるグリコサミノグリカン及びこれがコアタンパク質と結合したプロテオグリカンなどの主要成分が網目状のネットワークを形成した構造体で、組織の物性を左右しているだけでなく、細胞の遊走、増殖や分化の場を作って結合織の構築に中心的な役割を果たしている。このネットワーク構造は、尿素処理などで構成タンパク質を変性させると可溶化できる。この溶液から尿素を低温下で透析除去した後に動物に注入することで加温すると、構成タンパク質の立体構造が部分的に回復したネットワーク構造が体内で再構成される。我々は、この可溶化マトリックスに線維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加してマウスに皮下注射すると、任意の部位の結合織に任意の大きさの脂肪パッドを誘導できることを発見した。このことは、注入部位に形成された再構成マトリックス領域に内在性の前駆細胞が進入して健全な脂肪細胞に分化することをしめす。この可溶化マトリックスによる軟部結合織の誘導形成は、外傷によって皮下軟部組織を失った患者や、顔面の半側の皮下結合織だけが特異的に萎縮する顔面半側萎縮症の患者などの治療に大いに役立つと期待される。
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