研究概要 |
結合組織は可変性に富んだ組織であり、状況に応じて既成組織を更新、修復、代償する能力を持っている。この性質を利用すると、「任意の部位に」「任意の分量の」脂肪組織を誘導できることを我々は本研究ではじめて明らかにした。本研究で挙げた主要な研究成果を概説すると次のようである。鳥山和宏ら(1998),組織培養工学,24,143-146に発表した論文では、培養用のマイクロキャリアービーズ表面に前駆細胞を着生させて皮下注入すると、間葉系幹細胞が周辺に遊走してビーズを包み込む結節を形成するが、ビーズがbFGFを含まないと脂肪分化は見られないが、含むと間隙に脂肪が分化することを報告した。Kawaguchi et al.(1998)De novo adipogenesis inmice at the site of injection of basement membrane and basic fibroblast growth factor.ProcNatI Acad Sci USA.95,1062-1066として発表した論文では、マトリゲル(可溶化基底膜)とbFGFを混合注入するだけで、内在性脂肪前駆細胞がマトリゲルに侵入して健全な脂肪細胞に分化することを報告した。これらの結果は、日本農芸化学会、日本組織工学会、日本形成外科基礎学術集会、アディポサイエンス研究会で報告した。また、1998年7月24日に日刊工業新聞に掲載された。
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