研究概要 |
本研究では,超音波による心拍出量測定法を肺動脈カテーテルに応用し,肺動脈内からの血管内超音波断層法と血流速度測定法を用い,超音波による測定精度が高くかつ連続測定できる心拍出量測定法の開発を試みている. 本年度は,昨年度の使用している独立して先端圧がモニターでき,カテーテル硬度の柔らかい塩化ビニール製のtriple lumenの特注カテーテルで課題となっていた心腔内心エコー図法から心腔,肺動脈断層図の描出と心拍出量測定法の完成を試みた.今年度用いた血管内エコー図用(IVUS用)カテーテルは,20MHz(4.5Fr)の素子回転型IVUS用カテーテル(Aloka,Tokyo)と20MHz(4.5Fr)の64素子電子走査型IVUS用カテーテル(Avanar transducer)(Endosonics Ulestraten,Netherlands)で,各々画像描出装置はSSD550prototype(Alaka,Tokyo)とOracle Imaging System In-Vision Plus(Endosonics Ulestraten,Netherlands)との組み合わせで行った.操作性,カテーテルの柔軟性,画像のクオリティで素子回転型よりも電子走査型IVUSカテーテルの方が,研究者らの用いている肺動脈カテーテル内から肺動脈断面の描出,断面積計測には優れていた.Avanar transducerでも20MHzのIVUS用カテーテルでは右室さらには左室壁を描出することは不可能で心腔内心エコー図としてはよりやはり10-15MHzの低発振周波数のIVUS用カテーテルの必要性が認識された.しかし,心拍出量の測定において必要なのは肺動脈断面積であり,この目的のためには15-20MHzのAvanar transducerで十分であった.今後,安定して肺動脈内から肺動脈断面の描出可能な肺動脈-IVUSカテーテルの開発が必要であるが,今年度の研究でも研究者らの開発した方法でリアルタイムに連続的心拍出量測定が可能であることが示唆された.具体的研究結果として,肺動脈に電磁流量計を装着して測定した心拍出量と,研究者らの作成した肺動脈カテーテルから肺動脈血流速度と肺動脈断面積を測定して演算で得られた心拍出量は良好な相関関係,測定値の一致をみた. 今後の装置の改良によって臨床使用できる肺動脈カテーテルを用いた血管内超音波法による連続的心拍出量モニタリングが可能になることが示唆された.
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