研究概要 |
平成9年度〜10年度の本研究において以下の実績を上げた. 1) 18-hydroxycortisol(18-OH-F)の大量合成 グラムスケールの合成法を確立し高純度標品を大量に調製した。 2) 抗18-OH-Fモノクロナル抗体の大量調製 特異性,親和性に優れる実用レベルのモノクロナル抗体を大量に調製した。 3) 磁性分離方式高感度化学発光イムノアッセイの確立 アクリジニウム標識による高感度化により測定範囲は0.1-10ng/tube(血清濃度換算で2-200ng/ml)まで向上した.本システムを全自動イムノアッセイ装置にインストールして15分での測定が可能となった。 4) 簡便診断法の確立 乾燥濾紙尿を試料として用いる方法を確立し液相法と良好な相関を得た。また,ゲルマトリックスに抗体を固定し,アフィニティイムノアッセイを作製し,0.5ng/mlのカットオフ付近では良好な性能を示した。 5) 臨床応用 化学発光法により求めた原発性アルドステロン症患者の血清18-OHF濃度は10.6±3.5 (mean±SD,range;5-15.5)ng/mlであったが,術後は全例が2ng/ml以下に低下した.Conn-Cushing症候群の1例では29ng/mlと著しい高値を認めた.北海道大学医学部の関連病院に通院中の高血圧患者(n=261)から随時尿を採取し18-OHF測定を行った.18-OH-Fは250ng/mg creatinine付近をピークとして23-1050ng/mlに分布した.creatinine補正値と未補正値との相関はr=0.605と比較的良好であった. 6) 高値例の解析 18-OH-Fが>600ng/mg creatinineの高値を呈した7例についてグルココルチコイド反応性アルドステロン症の原因であるキメラ遺伝子をPCR法にて検索したが検出されなかった.画像診断により最も高値の2例(1050,861ng/mg creatinine)に副腎皮質腫瘍が発見され原発性アルドステロン症と診断された. 総括)本研究により初めて原発性アルドステロン症のスクリーニングが可能となり,実際に高血圧患者から0.8%の頻度で患者を検出できた.また,グルココルチコイド反応性アルドステロン症は高値例の中にも見いだされず,日本人の高血圧の原因としては頻度が低い可能性が示唆された.
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