研究課題
腫瘍の増殖と進展には血管新生が密接に関わっており、腫瘍細胞が産生する多様な生理活性物質が血管新生を促進することが知られている。そのなかでも、basic-fibroblast growth factor(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子acidic-fibroblast growth factor(aFGF)、血管内皮増殖因子vascular endothelial growth factor(VEGF)は代表的な血管新生因子として位置づけられてきており、これら血管増殖因子がヒト悪性腫瘍の有力なマーカーとなり、かつ治療にも応用可能なことが強く示唆されてきている.本研究では分泌型血管増殖因子(VEGF)と非分泌型血管増殖因子(bFGF)に着目し、腫瘍の診断と治療に実用可能な血管増殖因子抗体を開発することを目的としたが、まずその臨床的価値の妥当性を確認する目的で、泌尿器科領域の代表的悪性腫瘍である腎細胞癌、膀胱癌に着目しこれら腫瘍における血管増殖因子の重要性に関して検討した.本年度の検討では、表在性膀胱癌におけるVEGF、bFGF、aFGFの発現とその病理学的パラメータとの関連においては、これらの発現量と腫瘍全体における血管の増生形態との間には有意な関連は認められなかったが、腫瘍の基底膜下浸潤には局所の血管新生因子の発現増加を伴うことが示され、腫瘍の浸潤や転移抑制における利用価値が示唆された.また、腎細胞癌においては、腎癌患者の血中VEGF濃度は正常対照と比較して有意に高値を示すことが判明した.また、血中のVEGF濃度は腫瘍の容積、進展度や臨床病期と有意に相関し、治療効果のマーカーとしても有用である可能性が示された.
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