研究概要 |
急速に進行する高齢化社会にあって、閉経後女性に増加する動脈硬化と密接に関連する虚血性心疾患、骨粗鬆症に対し、ホルモン補充治療(Hormone Replacement Therapy:HRT)が注目されている。われわれは、マウス脂肪細胞3T3-L1を用いて、エストロゲン受容体(ER)遺伝子を安定導入することにより、ERを構成的に発現した変異株3T3-L1-ERを樹立し、細胞生物学的解析ならびに、脂肪合成に関わる律速酵素であるlipoprotein lipase(LPL)のエストロゲンによる発現調節に関する研究を行った。これらの研究成果はHomma et al.,J.Biol.Chem.(in press,2000)にて公表の予定であるが、その要旨は以下の通りである。 1.ERを構成的に発現している変異株3T3-L1-ERにおいて、分化誘導時、エストロゲン添加により非添加時と比較して著明な脂肪蓄積の抑制ならびに、細胞内トリグリセリド量の減少が観察された。 2.LPL遺伝子mRNAは3T3-L1-ER細胞にエストロゲンを作用させると約1/8に抑制される事が観察された。 3.LPL遺伝子転写開始点より上流1980bpまでをCATレポーター遺伝子に接続し、ER発現ベクターと共に3T3-L1細胞に導入し、エストロゲンによる転写活性を測定したところ、LPL遺伝子の転写活性は約1/6に抑制され、LPL遺伝子は、転写レベルにおいて、エストロゲン依存性の抑制を受けていることが明らかとなった。 4.3で述べた転写レベルでの抑制に関わるシスエレメントを種々のミュータントLPLプロモーター_-CAT遺伝子を用いることにより、_-1856/_-1850のCTGAATTCの配列であることを示した。また、この配列に特異的に結合する核内蛋白質の存在を明らかとした。
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