研究概要 |
病態の把握とサイトカイン、増殖因子の関わりを臨床例から得た眼内液中濃度と網膜症病態との関連を検討した。VEGFは糖尿病網膜症では血管新生のみられる活動性増殖網膜症において前房水(470pg/ml)、硝子体液(1327pg/ml)ともにVEGF濃度の有意な上昇がみられ(非糖尿病患者眼ではそれぞれ,90pg/ml,71.5pg/ml)、臨床的には血液眼柵機能破綻、糖尿病罹病期間との関連がみられた。PlGFは硝子体液では虚血性網膜症眼で平均457.7pg/ml、増殖網膜症で408.8pg/mlであり、網膜虚血との関連が示された。VEGFとPIGFの硝子体濃度には強い相関がみられた(r=0.53,P=0.019)。IL-6は増殖糖尿病網膜症眼では有意に上昇していたが,VEGFとIL-6には相関がなかった。TGF-βスーパーファミリー(TGF-β、アクチビンA)はともに糖尿病、非糖尿病患者眼で検出された。血管新生制御及びin vivo実験系での血管新生制御とサイトカイン、増殖因子の役割を検討した。VEGFはin vitro、in vivo系ともに血管新生を促進した。TGF-βは培養血管内皮細胞の機能を抑制するがin vivo系では血管新生が促進された。生体眼内での作用は複雑である。アクチビンAはin vitro,in vivo系ともに抑制作用を示し、生体内では血管新生抑制的に作用することが示唆された。アケチビンAを血管新生抑制剤として使う可能性を考えた。血管内皮細胞の増殖抑制の感受性がアクチビンAはTGF-βより低いが、II型受容体遺伝子を血管内皮細胞に遺伝子導入したところアクチビンAに対する感受性を10倍上昇させた。今回の結果より網膜症にみられる血管新生の病態でVEGFは中心的な作用を示していることTGF-βスーパーファミリー、IL-6は血管新生を主に間接的に制御している可能性が考えられた。
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