研究概要 |
アポトーシスは生体のなかで不要になった細胞や異常をきたした細胞を除去、する細胞に備わった細胞死の機能である。最近,その制御異常が,癌,自己免疫疾患,AIDSなどの様々な疾患の発症に深く関わっていることが明らかになってきている。我々は,アポトーシスの定義ともなっているDNAのヌクレオソーム常位での断片化を司るDNAエンドヌクレアーゼを同定し,DNaseγと名付けた。本研究では,この分子をアポトーシスの新たな分子マーカーとして癌などの診断法に利用する技術の開発を試みた。 小児癌では,自然退縮,自然治癒を呈するimbryonal tumorsが多く見られる。最近,この現象がアポトーシスによるものであることが示唆されている。そこで,我々は種々のヒト神経芽細胞腫培養株において,制癌剤によるアポトーシス誘導で調べた結果,DNA断片化の程度により3種に分類できることが分かった。つまり,1)DNA断片化を全く起こさない細胞種,2)DNAの大断片化のみ起こす細胞種,3)DNAのヌクレオソーム単位までの分解を起こす細胞種である。この3種において,DNaseγの発現レベルを抗ヒトDNaseγ抗体を用いて調べた結果,DNA断片化能と相関性のあることが判明した。また,この結果はDNaseγ遺伝子の発現をRTPCR法で調べた結果とも一致するものであった。従って,抗DNase抗体を用いてDNaseγの発現の程度を鋭敏から簡便に測定する方法の開発は,小児癌の自然退縮,予後等の新しい診断法として期待される。
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