研究概要 |
本研究は、味覚感受性の異なる親系統の遺伝解析をもとに、遺伝子導入系の育成や各遺伝子の人為的操作を行い、味覚受容情報伝達機構解明に役立つ遺伝的変異マウスの作出を行う。 1. コンジェニック系由来の変異マウスの育成と作出 平成9年度に行った、コンジェニックN14代の育成から、今年度はN15代へと展開し、ドネー由来の遺伝子セグメントをより小さなものとしたときの味覚応答特性の解析を行った。昨年度と同様に、dpa遺伝子は行動実験によるD-フェニルアラニン甘味応答能の有無、Sac遺伝子についてはサッカリン嗜好性を指標にし、dpa+/Sac+、dpa+/Sac-、dpa-/Sac+系マウスを選別した。各グループの鼓索神経応答を記録し、グルマリンの甘味応答抑制性と糖応答の大きさを比べると、N14代とは異なりN15代マウスのSac+グループとSac-との間で糖応答の大きさに差がなくなっていた。したがって、N14からN15への継代の過程で糖応答に対するSac遺伝子の関与に何らかの変化が起こったことが予想される。これについて今後さらに追及する必要がある。 2. 糖尿病ミュータントマウス由来の変異マウスの育成と作出 昨年度と同様に毛色遺伝子(m:ミステイ)をカップルさせたdbヘテロ遺伝子型マウスとBALBを交配し、Flを得て++/dbm遺伝子型をもつ個体を選別し、それらの交配によりF2を得て、そのFl-dbmヘテロ個体とBALBともどし交配により次世代を得、継代育成した。db-/dpa+,db+/dpa+,db-/dpa-, -db+/dpaの個体を選別し、それらの味細胞におけるレプチンレセプターの発現を組織化学的に検索した。 その結果、蛍光標識Cy3-レプチンの有郭乳頭味蕾との結合はいずれの群においても見られ、味細胞におけるレプチンレセプターの発現の可能性が示唆された。しかし、群間の差については認められなかった。
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