研究概要 |
Bruxismの電気生理学的診断装置の開発改良と、Bruxismによる歯周組織破壊のメカニズムを解明する目的で研究を行い次の成果を得た。 実験1. Bruxismの診断装置の開発と臨床診断法の確立 本年度は一般の多くの歯科医師が臨床応用可能な小型Bruxism診断装置の開発を目的とし,すでに我々が開発し使用してきた夜間睡眠中のBruxismの電気生理学的記録装置を大幅に改良し,日常で臨床応用可能なように診断装置を小型軽量化し,さらに測定法と分析法を簡易化し,夜間睡眠中のBruxismおよび昼間無意識に行っているBruxismの実態を記録できる新しい装置を試作した。 今回開発した装置は約65mm×100mm×35mmで,頭部バンドにて固定して使用し,左右の咬筋に接続する4本とアース用の計5本の端子が出ており,装置表面には総Bruxism時間を表示する液晶が組み込まれ,左右の咬筋が同時に活動したときのみに反応するようにAND回路が中程に組み込まれている。AND回路をOR回路に組み換えることも容易であり,この場合はどちらかの咬筋が活動したときに反応する設計である。本装置は小型で装着時の違和感が少なく装置を付けたまま歩くことも可能であり,患者のBruxismの実態を客観的に診断できる。 実験2. Bruxismによる根分岐部の歯周組織破壊のメカニズムの解明 (1) Bruxismの特徴,特異性として睡眠中のBruxismと覚醒時に意識的に行うBruxismがどのように異なるかを臨床的に健康な成人10人について加藤(義)らが開発した睡眠時顎運動記録装置を用いて顎運動,筋活動,咬合接触を同時記録し比較した結果,Clenching時の下顎の位置は睡眠時と覚醒時で異なる場合が多く,Grinding時の下顎の移動方向も両者間で異なる場合が多く観察された。 (2) ネコの臼歯の歯肉縁下に綿糸を2週間結紮した軽度炎症群と8週間の重度炎症群をつくり,隣接面に矯正用alasticを挿入してBruxismと同様の咬合性外傷を合併させ,臨床変化を調べるとともにHE染色,アザン染色,TRAP染色を行って破骨細胞性骨吸収を中心に検索した結果,炎症のみの軽度炎症群では炎症は歯肉辺縁に限局していたが隣接面骨頂部に破骨細胞が一層並んでおり,根分岐部には変化がなかった。一方重度炎症群では隣接面のアタッチメントロスと骨吸収が進み骨頂部に破骨細胞が密集し根分岐部中央にも炎症性細胞と破骨細胞が多数存在し,両者の合併によりさらに進行しており,Bruxismは根分岐部の炎症性病変を急速に進行させる可能性が高いと考えられる。
|