研究概要 |
我々は従来行われてきた人工生体材料にょる顎骨欠損補填ではなく,遺伝子組み替え型ヒト骨形成因子(rhBMP-2)を加えることで骨誘導能を用いた顎骨欠損の補填を考え,これを能動的骨欠損補填法と提唱し,研究成果を報告してきた.この方法を用いると,歯周組織より大きな口腔外科領域の骨欠損でも確実に骨組織を再生させることが可能であり,再現性のある動物実験の結果がこれまでに十分得られてきた. さらに我々は,このようにして再生された骨組織は顎骨の形態の回復のみならず咀嚼機能をも同時に回復することが望まれると考え,再生した骨組織にデンタルインプラントを植立し,再生した骨組織が咀嚼機能を果たすことができるがどうかを検討した. イヌの下顎臼歯部に幅20mmの区域切除を行い,作成した顎提欠損に対して遺伝子組み替え型ヒト骨形成因子を用いて骨組織を再生させた.顎骨切除から16週後にこの新生した骨組織にデンタルインプラントを植立した. インプラント植立後,経時的にエックス線学的ならびに病理組織学的に検索したところ,4週後でも骨接合が観察されており,これは経時的に増加しており,さらにインプラント体周囲の新生骨についても,組織学的に成熟していくことが観察された. 我々は,このデンタルインプラントに上部構造を装着し実際に咬合させることを試みており,再生させた骨組織でも十分に骨組織としての機能をもち,我々の提唱する能動的骨欠損補填法を用いることにより,顎骨の形態の回復のみならず咀嚼機能をも同時に回復することが分った。 一方,骨形成因子(rhBMP-2)の投与を考える上では,担体についての研究,他の成長因子との相互作用などについて基礎的な研究も不可欠であり,それらの成果についても随時発表してきた. 我々のこれまでの研究成果では,能動的骨欠損補填法は臨床的に十分応用可能であることが示唆されており,さらに研究を進め,より安全,簡便で確実な骨組織の再生法を目指す。
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