一酸化窒素(NO)は生体において重要な情報伝達物質として作用しており、NOの生産過剰は種々の疾患の原因となり、最近医学における注目の物質となっている。特に免疫応答ならびに炎症反応においても重要な役割を担っていることが示されており、慢性関節リュウマチにおける関節炎のメディエーターとしてNOが関与していることに注目している。 徳島大学で発見されたニシキギ科植物クロズルからのジテルペンTriptoquinone Aがデキサメサゾンに匹敵する誘導型NO合成酵素(iNOS)遺伝子発現抑制作用を有することを見出した。このTriptoquinone Aは、急性及び慢性炎症モデルで抗炎症作用を有するが、我々はその作用機構を分子生物学的に研究し、Triptoquinone AはLPSやサイトカインにより誘導されるIL-1およびそれに続くiNOSmRNAの発現を転写レベルで抑制することを明らかにした。 Triptoquinone Aはキノン骨格を有するので、その活性構造としてキノン骨格が重要ではないかと考え、ベンゾキノン、ナフトキノンなどのキノン化合物の活性を調べてみたところ、ベンゾキノン類にiNOSmRNA発現抑制作用があることを見出した。ナフトキノン、アントラキノン類にはそのような作用はなく、活性の本体はベンゾキノンであることを明らかにした。さらに、その遺伝子発現抑制作用機構は転写因子NFkBの核移行を抑制することによる転写因子の不活性化によることを明らかにした。 このように生理活性天然物から由来して、その部分構造の簡単な化合物にiNOS阻害剤のプロトタイプが得られた。本研究の進展によりキノン誘導体に新しい作用機作に基づくステロイド様抗炎症・抗リウマチ剤の開発が期待される。
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