研究概要 |
茜草根(Rubia cordifoliaの根)より得られた抗腫瘍活性環状ヘキサペプチドRA-VIIは臨床試験において,有効域と毒性域との接近,注射剤としての水溶性改善などの難点が指摘されており,この点を克服するためにRA系化合物への化学修飾の試みを行なっている.すなわち,今年度は活性を失うことなく,水溶性を高めることが期待される誘導体2-ジイソプロピルアミノエーテル誘導体について,さらなる各種腫瘍系に対しする感受性についての検討を継続して行った.一方,現在までの活性試験結果より抗腫瘍活性環状ヘキサペプチドRA類に特徴的な環状イソジチロシン構造が活性に必須であることが推測されるが,その合成的供給の困難さより,RA-VIIからの効率的なシクロイソジチロシンへの変換法をほぼ確立することができた.そこで,このシクロイソジチロシンと各種テトラペプチド類を縮合・環化して新規RA類を合成して活性発現部位のトポロジーの解明するため,triazole環によりβターンを固定した各種テトラペプチド誘導体類の合成を計画し,作成した.今後,RA-VIIから誘導したシクロイソジチロシンと各種テトラペプチド類の縮合・環化反応の最適条件を検討していきたい. また,茜草根以外における新規生理活性ペプチド類の探索研究の結果,ナデシコ科の王不留行Vaccaria segetalis種子より得られたエストロゲン様活性環状ペプチドsegetalin類のコンホメーションと活性発現の関係について考察を行った.本化合物はレセプターアッセイ法では,活性を示さず,そのエストロゲン発現メカニズムに興味がもたれた.また,今回,単離・構造決定した亜麻仁Linum usitatissimum種子の新規免疫抑制環状ペプチドcyclolinopeptide類は,メチオニンのイオウ原子がさらに酸化されたものであり,もとの環状ペプチド類よりも活性が強いことが判明した.その他,Stellaria属,Leonurus属植物からも得られる環状ペプチド類についても,免疫抑制活性を検討し,構造と活性の関係について考察を加えていきたい.
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