研究概要 |
茜草根(Rubia cordifoliaの根)より得られた抗腫瘍活性環状ヘキサペプチドRA-VIIは臨床試験において,有効域と毒性域との接近,水溶性改善,活性コンホメーションの解明などを主目的に研究を進めていった.RA-VIIは溶液中において2-3種の安定な配座異性体の混合物としてするが,そのうち存在比率の高い2種はAla-2,Tyr-3残基間のN-メチルアミド結合のトランス,シス配置の相違基づくことを明らかにし,トランス配置の主配座異性体は活性を発現することを明らかにしてきたが,シス配置の配座異性体については不明のままであった.今回,Boc-アミノ酸のチオノニトロベンゾトリアゾール体とジペプチドを反応させて得たチオノトリペプチドを酢酸第二水銀存在下,N-ホルミルヒドラジンを反応させることにより,RA-VIIのAla-2,Tyr-3残基間をシスに固定したタイプのモデル化合物を合成することができた.本化合物はBoc-アミノ酸の縮合によりテトラペプチドにされ,NMR,X-線解析などのコンホメーション解析によりRA-VIIのシス配置の配座異性体と類似のコンホメーションを有していることを確かめることができた. 茜草根以外の新規生理活性ペプチド類の探索研究では亜麻仁Linum usitatissimum種子より得られた新規環状ペプチド類と関連環状ペプチド類の免疫抑制活性データを構築しすることができた.その他,植物生理活性環状ペプチド類の検索も平行して行ない,新規リード化合物となり得る環状ペプチド類の発見に努めた.
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