研究概要 |
これまでに行ってきた緑膿菌Psudomonas.aeruginosaが産出するアルカリプロテアーゼの動的構造解析に続いて,同様の金属プロテアーゼであるサーモリシンについても動的構造解析を目指した予備実験を行った。この系は活性に必須の亜鉛イオンを除いたアポ酵素結晶に基質とケージ化された亜鉛イオンをソーキングし,レーザー光照射で酵素反応をスタートさせるという戦略をとっている。また,酵素反応速度を遅くし,より動的構造解析が容易にできるよう低塩での実験の組み合わせも考えている。しかし,現在のところ,白色X線照射によって起こるアポ酵素結晶の放射線損傷が激しく構造解析に必要な精度を持ったデータ測定には至っていない。現在,結晶の改良を行っている。 一方,脳中に存在するカルシウム結合蛋白質S100Bのカルシウム結合型の立体構造を明らかにすることができた。その結果,カルシウム非結合型S100Bとの構造比較から,S100Bがカルシウムによってどのような構造変化を引き起こすか,ターゲット蛋白質をとのように認識してそれに結合するかに関する知見を得ることができた。すなわち,S100Bはカルシウムと結合することによって,両側が酸性アミノ酸残基でちりばめられた疎水性表面を大きく露出させる。そして,夕一ゲット蛋白質中,片方の面が疎水性アミノ酸残基で覆われ,かつリジンやアルギニンを持っているへリックス構造を認識する。今後,ターゲット蛋白質にS100Bが結合することによって引き起こされる構造変化と活性化機構についても研究を進めていく。
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