研究課題/領域番号 |
09557187
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原田 繁春 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教授 (80156504)
|
研究分担者 |
水谷 隆太 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (70272482)
野口 修治 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (60237823)
|
キーワード | 動的構造解析 / 亜鉛プロテアーゼ / N-アセチルムラミダーゼ / 構造生物学 / 酵素反応機構 / 求核攻撃 / 水素結合 / 水の活性化 |
研究概要 |
放線菌Streptomyces caespitosusが産出する亜鉛プロテアーゼScNPの超高分解能(1Å分解能)での立体構造の解明に成功し、酵素活性に必須である亜鉛の配位構造を精密に決定できた。四面体配位構造を形成している配位子のうち、アスパラギン酸と2つのヒスチジンは亜鉛に対して通常の配位距離にあるが、水分子は少し短い。また、この水分子にはグルタミン酸が水素結合をしており、その距離も通常の値より短い。これは、水分子がこれら2つの相互作用によって大きく分極し、正電荷を持つ亜鉛とはOH^<δ->が、負電荷を持つグルタミン酸とはH^<δ+>が配位結合と水素結合を形成することで説明ができる。このように、ScNPでは酵素反応がスタートする以前にすでに求核攻撃に関与するOH^-を亜鉛に配位している水分子から生成させるための準備ができている。また、放線菌Streptomyces globisporusが産出するN-アセチルムラミダーゼでは、次のような反応機構で酵素反応が進行することを明らかにできた。Asp98が酸触媒となり、基質のNAMとNAGの間のβ-1,4グリコシド結合中の酸素原子にプロトンを引き渡し、グリコシド結合の切断が起こる。この時、反応中間体として生じるオキソカルベニウムイオンはAsp198の負電荷で安定化される。最後に、今度はAsp98が塩基触媒となり水分子を活性化し、その結果生じたOH^-がO1酸素原子と隣接する炭素原子を求核攻撃し反応が終了する。
|