研究概要 |
高齢化社会を迎え、老人性痴呆は大きな社会的問題となっており、各種の抗痴呆薬の開発が進んでいる。しかし、認可が取り消されるそれが相次いでおり、開発の困難さを示唆している。 ところで最近、ほ乳類の脳内に末梢血中の10倍以上ものステロイドホルモンが見出され多大の注目を集めている。これらのneurosteroidsあるいはneuroactive steroidsと呼ばれ、17-又は20-オキソステロイドの遊離型、各種抱合型(sulfate,fatty acid ester,sulpholipid抱合体など)より構成され、脳内で生合成されることが知られている.このような折、pregnenoloneやestrogenの老人性痴呆薬としての有用性が示唆され、上記の知見との関連が注目されている。 昨年度、当研究はHPLC,LC/MSを駆使してラット脳を検索し、pregnenolone,dehydroepiandrosteroneの3-stearate,-palmitate(計4種)を同定することに成功した。また、脳内におけるpregnenolone,dehydroepiandrostrone,pregnenolone 3-sulfateの存在もLC/MSなどにより改めて確認した。 本年度は、上記脂肪酸抱合体がストレスにより減弱し、逆に遊離型neurosteroidsが増加することを明らかとした。さらに、ラット脳内におけるclassical estrogen,guaiacol estrogenの存在をGC/MS/MSで初めて確認した。従来の研究では脳内におけるエストロゲンレセプターの存在は明らかとされているが、estrogenの脳内における存否については不確かであった。本研究は今後の抗痴呆薬の開発研究に一つの方向を示唆したものとして注目される。
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