研究課題/領域番号 |
09557189
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐治 英郎 京都大学, 薬学研究科, 教授 (40115853)
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研究分担者 |
森 啓司 富士写真フィルム, 機器事業部, 主任技師
間賀田 泰寛 京都大学, 医学研究科, 助手 (20209399)
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キーワード | 脳機能 / 糖代謝 / ラジオルミノグラフィー / 放射性機能分子 / 低酸素状態 / スライス / 画像解析 / イメージングプレート |
研究概要 |
本研究は、短時間内に広い範囲にわたり放射能量を定量性高く測定可能であるラジオルミノグラフィを利用して、放射性核種で標識された生理・生化学反応に特異性の高い機能分子の脳スライスでの動態の局所的変化を空間的・時間的に高い解像力をもって定量画像解析するという、放射線を利用した新しい生体機能の状態分析法を開発するとともに、それを用いて、エネルギー代謝および神経伝達機能を中心とする脳機能の解析、特に機能の局所的、特異的変化、各種神経系の機能連関などに関する有効な情報を得ることを目的とする。そこで、本年度は実験系の作成とその評価を行うことを計画し、脳スライスを液通過性の高いナイロンネットで固定し、その下にラジオルミノグラフィ用フィルム(イメージングプレート)をできるだけ近づけるように置くシステム(インビトロリビングスライス実験系)を試作し、その画像化の可能性について種々の条件と検討した。放射性化合物として糖代謝状態の指標となる18F-フロロデオキシグルコース(FDG)を用い、虚血状態を想定した低酸素状態でのスライスへの放射能の取り込み状態の画像化をラジオルミノグラフィ解析装置を用いて試みた。その結果、低酸素に置かれている時間とともに18FDGの取り込みは増加し、また乳酸の濃度も増加し、低酸素状態下ではエネルギーの産生は嫌気的糖代謝に依存していること、また低酸素状態時にグルコースをインキュベーション溶液中に入れておかないと再酸素化した場合も18FDGの取り込みは正常時までは戻らないことを認めた。このことは、虚血時においても脳細胞の生存を維持するためにグルコースが重要な役割を演じていることを示唆しているものと考えられる。また、現在の方法では画像の解像力が悪く、局所の動態を定量的に把握するには今後画像の解像力を向上させる方法の開発が必要であることが認められた。
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