本研究では、統合型マイクロデバイス技術による高性能遺伝子診断システムを開発するために研究を進め、下記のような成果を得た。 1. 石英チップ上に作成したマイクロチャンネル中を泳動するDNAの泳動挙動およびダイナミクスを直接観察するための蛍光顕微鏡型検出システムを開発した。この装置によって得られた結果より、DNAのサイズと泳動挙動およびDNAのダイナミクスとの関連を高分子物理的に考察し、その関係を定量的に評価できる理論を確立し、マイクロチップ上でのDNA解析の最適条件を決定した。 2. 上記の直接観察および確立した理論を基に、1000塩基対までのDNA断片を1分以内に解析できる条件を確立した。このシステムを用いて、疾患原因遺伝子における変異・多型を検出するシステムを開発し、このシステムを用いた場合の変異・多型検出の能力・速度・精度などを検討し、高速・高精度な疾患の遺伝子診断システムとしての可能性と限界を評価した。 3. さらに、マイクロチャンネルを100本程度並列化したキャピラリー中を泳動するDNAを全て同時に高感度検出できるシステムを開発した。また、PCR用の小型反応容器を作成し、同一チップ上にPCR反応をも可能にする回路を組み込んだ統合型マイクロデバイスを試作した。これを用いて、異なる種類の疾患原因遺伝子の変異・多型解析を同時に行い、疾患の遺伝子診断における速度・精度を検討した。 これらの成果は、疾患の遺伝子診断を高速化・高精度化する上で重要な貢献をなすものである。以上の研究成果を基礎に、さらに、今後は、システムを発展させて、多数の疾患関連遺伝子を同時に解析できるシステムを開発するために、同一チップ上にPCR反応回路をも組み込んだ統合型マイクロデバイスシステムを完成させ、多数の遺伝子の多型を同時に検出できる疾患の超高速遺伝子診断システムを確立するための検討を進める予定である。
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