研究課題/領域番号 |
09557191
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長澤 滋治 北海道大学, 薬学部, 教授 (70029958)
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研究分担者 |
佐藤 昇志 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (50158937)
瀬谷 司 大阪府立成人病センター, 研究所, 研究担当
西村 仁 北海道大学, 薬学部, 助手 (80241347)
山下 俊之 北海道大学, 薬学部, 助手 (90192400)
高橋 和彦 北海道大学, 薬学部, 助教授 (10113581)
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キーワード | 癌細胞 / 免疫 / 補体 / M161抗原 / オプソニン効果 |
研究概要 |
癌細胞やウイルス感染細胞等の変化した自己細胞に対する防御因子としては、獲得性免疫系のTリンパ球の他にも、ナチュラルキラー(NK)細胞やマクロファージ等の細胞性因子や補体という先天的に備わった免疫機構も重要な働きをしている。本研究は、特に補体を中心に癌免疫における先天性免疫因子の機能を分子レベルで明らかにしようとするもので、下記の成果を得た。 1:癌細胞に発現する同種補体活性化分子 元来、補体は同種細胞を攻撃することはない。我々は、ある種の癌細胞が同種補体の攻撃を受けて細胞死に至ることを見いだした。これは、癌細胞には同種補体を活性化する未知分子が発現している可能性を示唆した。そこで、癌細胞膜から同種補体活性化分子の探索を進め、それが43kDaの蛋白質であることを明らかにし、M161抗原と命名した。そのcDNAクローニングを行い、完全長の遺伝子のクローニングにも成功した。M161抗原は、癌細胞から分泌され、近傍の癌細胞膜に結合し、第二経路と呼ばれる補体経路を活性化することを明らかにした。M161抗原はそれを分泌する癌細胞のみならず、種類の異なる癌細胞にも結合して、補体攻撃を誘導した。これは、161抗原も癌免疫療法への応用の可能性を示唆する知見である。 2:薬物治療でアポトーシスを起こした肺癌細胞による同種補体活性化 アポトーシスは計画的な細胞死といわれ、食細胞により速やかに貧食除去される。その排除機構に補体が関係していることが明らかになった。この肺癌細胞株は補体を活性化しないが、抗ガン剤処理でアポトーシスを起こすと、同種補体活性化を誘導した。補体活性化により、iC3bという補体フラブメントが沈着し、食細胞の補体レセプターを介した貧食応答を亢進した。化学療法における癌細胞の速やかな除去過程には補体が重要な働きをしている可能性を示唆する。
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