亜鉛フィンガーは約30個のアミノ酸を1つのユニットとして、複数のユニットが直列に並ぶという際立った特徴をもち、この繰り返し製造と認識配列の多様性は他に例を見ない。基本的には単量体としてのDNAに結合するので、モジュールとして亜鉛フィンガーを組み合わせることにより、認識配列の長さや塩基の種類を容易に変えることが可能であり、DNA認識分子のde novoデザインへの展開が期待できる。そこで、天然制限酵素の認識よりも広い20〜30塩基対程度の非対称配列の認識を達成するため、1つの亜鉛フィンガーモチーフ当たり3塩基を認識する転写因子Sp1由来のCys_2His_2型亜鉛フィンガーモチーフを6個又は9個導入することを考案した。遺伝子工学的に創製された新規マルチ亜鉛フィンガー蛋白質のDNA結合特性をフィトプリンティング法やメチル化干渉法等を使って追求した結果、6個の亜鉛フィンガーを有する蛋白質では約20塩基配列を、また9個の亜鉛フィンガーを有する蛋白質では約30塩基配列を特異的に認識することがわかった。さらに、これら新規マルチ亜鉛フィンガー蛋白質のN末端側にDNA切断部位としてトリペプチド(グリシルグリシルヒスチジン)を新たに導入し、長いゲノムDNAに対する切断を展開し、ゲノム解析用の人工制限酵素としての実用化を検討している。
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