研究概要 |
20〜84歳までの男性72名,女性81名,計153名を対象として,(1)磁気共鳴映像法(MRI)を用いた大腿部および股関節部の筋横断面積の測定,(2)等速性筋力測定装置を用いた膝伸展・屈曲力測定,および(3)近赤外分光法(NIRS)を用いた運動中の筋酸素化動態の測定を行った.大腿部筋横断面積では,20歳代を基準とした場合,男性の伸筋群は55歳で28%,75歳で40%の低下を示したが,女性では45歳で17%の低下が認められた後はさらなる低下はみられなかった.屈筋群でも男性は55歳までに13%の低下が認められたが,女性は加齢に伴う筋量の変化はみられなかった.一方,脚を引き上げる時に働く股関節部の大腰筋の横断面積は,男性は80歳までに38%の低下が認められたのに対し,女性では46%というより大きな低下が観察された.膝伸展・屈曲筋力では,男性では20歳代と比較して80歳代で約60%の筋力低下が認められたのに対し,女性では約40%の低下にとどまった.さらに,筋横断面積あたりの筋力に換算した場合,男性では加齢とともに有意に低下したのに対して,女性では加齢に伴う有意な低下は観察されなかった.NIRSを用いた筋の酸素代謝動態の測定における運動では,同年齢の高齢者でも,全身的な有酸素的能力が高い高齢者の方が,低い高齢者よりも,より大きな絶対的仕事量を発揮した.しかしながら,相対的に等しい強度の運動における筋の酸素化動態をみた場合,両者の間に明かな差異は観察されなかった.さらに,これら高齢者の値は若齢者の値とも差がみられなかった.このことは,相対的に等しい強度での運動中の筋における酸素取り込み能力は加齢および体力レベルにおける影響を受けにくいことを示している.また,次年度からのミトコンドリアDNA分析のための基礎実験を行い,ラットの骨格筋を用いた分析が可能であることが確認できた.
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