研究概要 |
本年度は,60歳以上の高齢者を対象として,定期的なトレーニングが加齢による筋萎縮とそれに伴う変化にどのような効果を有するのかを調べた.60歳以上の高齢者40人に対して,週2日のトレーニングを行わせ,1日は主に筋力トレーニング,もう1日は持久的トレーニングを行わせた.半年間トレーニングを行わせた結果,特に男性において,等尺性膝伸展筋力が有意に増加した.さらに,推定の最大酸素摂取量も増加した.しかしながら,筋横断面積には変化がみられなかった.これらの結果は,週2回という比較的低頻度のトレーニングでは,筋量の低下を抑制することは難しいが,筋力や呼吸循環系能力を改善するためには有用であることを示している.このトレーニング実験は継続中であり,来年度はさらに詳細な検討を行う予定である. ラットを用いた実験では,90週齢のラットに対して10週間の持久的トレーニングを負荷し,ミトコンドリアDNA(mtDNA)の突然変異の蓄積がどのように変化するのかをPCR法を用いて解析した.その結果,ラットの骨格筋においてmtDNAの突然変異の検出には成功したものの,有意なトレーニング効果を見い出すことはできなかった.この点に関してはさらなる検討が必要になると思われる. さらに,老化促進モデルマウス(SAMP6)とそのコントロール(SAMR)を用いて,老化にともなう脊髄運動ニューロンの細胞体サイズと細胞数を検討した.生後40週齢と50週齢では,上腕二頭筋,上腕三頭筋,足底筋,長指伸筋を支配する運動ニューロンの細胞体サイズおよび細胞数は,SAMP6とSAMRで違いがみられなかった.一方,生後60週齢のSAMP6では,いずれの筋を支配する運動ニューロンとも細胞体サイズおよび細胞数の減少が認められた.特に大型サイズの運動ニューロンで選択的に細胞体サイズが減少していることが明らかになった.
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