研究概要 |
本研究は、陽子線の高度利用分野(放射性廃棄物の加速器駆動消滅処理や癌の陽子線治療など)で必要とされる中高エネルギー領域における陽子核データの試験的ライブラリの作成および新しい検索・利用システムの開発を行うことを目的としている。本年度は、3つの作業項目ー(1)核データ測定、(2)理論解析、(3)核データ評価・ファイル化、ーを設定し、ライブラリの作成とシステム完成に向けた研究を行った。 (1)核データ測定:標的核としてNiー58,Zrー90,Auー197,Biー209を選定し、42および68MeVの陽子入射反応から放出される軽イオン(陽子、重陽子、3重陽子、^3He、α)の2重微分断面積測定を日本原子力研究所TIARA施設で行った。測定結果を最新の評価値LA150(LANL研究所)と比較した結果、陽子放出については良い一致を示したが、重陽子等の複合粒子放出については、昨年度のC-12,Al-27の結果同様に、実験値とLA150評価値間で不一致が見られた。 (2)理論解析:一体密度関数のWigner変換を導入することで改良を行った半古典的歪曲波(SCDW)モデルをC-12からAuー197までの広い質量数範囲の標的核に対する(p,p'x)や(p,nx)反応に適用し、放出粒子の角分布の実験値を良好に再現できることがわかり、本モデルの陽子核データ評価への有効性を実証できた。また、軟回転体模型+チャンネル結合理論を使い、150MeVまでの入射エネルギーに対するC-12の陽子及び中性子弾性・非弾性散乱断面積の実験データを再現できる光学ポテンシャルパラメータを決定できた。 (3)核データ評価・ファイル化:C-12,Si-28に対するデータベース作成にむけて、最新の実験データを収集し、全反応断面積、弾性散乱断面積、非弾性散乱断面積、中性子及ぶ荷電粒子生成断面積(放出粒子の2重微分断面積)、放射化/核種生成断面積のファイル化を進めた。
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