研究概要 |
タングステン(W)を核融合炉プラズマ対向機器として用いる場合の最大の課題は,脆さ(低温脆化,再結晶脆化,照射脆化)の改善である。そこで,その改善に不可欠な「高純度超微細粉末・合金作製装置」を予定通り設置し,それを用いて核融合炉プラズマ対向機器用W合金を試作するとともに,既設の装置により試作合金の低温靱性と再結晶特性を評価した。 試作した合金は,純W粉末に遷移金属炭化物のTiCを0.2〜0.5質量%添加したもので,以下の方法により作製した。まず,2種類の出発原料粉末の純化処理を行い,次にそれらをガス不純物混入の恐れのない清浄雰囲気下でメカニカルアロイング(MA)処理し,さらにHIP処理を行って緻密体とした後,加工により板材とした。TiC濃度が高い場合には圧延時に割れが生じ,相対密度が98.5%までのものしか得られなかったが,TiC濃度0.3質量%以下では圧延が可能で,相対密度99.5%の板材を得ることができた。これらの試作合金について,標準材とした市販の純Wの板材(相対密度100%)とともに,衝撃3点曲げによる低温靱性の評価と再結晶特性の評価を行った。その結果,試作合金の低温靱性は密度に強く依存し,相対密度99.5%の合金は,純Wに比べてDBTTが100℃以上も低く,また強度がかなり高い等の優れた低温靱性を示した。試作合金は純Wより密度が低いので,相対密度を100%にまで高めることにより,さらに低温靱性の向上が期待される。また,試作合金では再結晶温度が著しく上昇し,最も低い合金でも約2000℃の再結晶温度を示した(純Wの再結晶温度は1300℃である)。
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