研究概要 |
タングステン(W)を核融合炉プラズマ対向機器として用いる場合の最大の課題である脆さ(低温脆化,再結晶脆化,照射脆化)を改善するために,既設の「高純度超微細粉末・合金作製装置」を用いて微細結晶粒・遷移金属炭化物粒子分散組織をもつW合金を試作し,その低温靭性の評価,高速中性子照射実験および照射脆化の評価を行った。試作した合金は,純W粉末に遷移金属炭化物として周期律表IVa族のTiCとHfC,Va族のTaCとNbCの各粉末を約0.6mol%添加し,遊星型ボールミルによるメカニカルアロイング(MA)処理を行ってからHIP処理を行って成形体とした後,熱間鍛造と熱間圧延により板材としたものであるが,衝撃3点曲げ試験を行った結果では市販の純W(相対密度100%)と同程度の低温靭性しか示さず,低温靭性はほとんど改善されないことがわかった。このように低温靭性が改善されなかった理由を検討した結果,主な要因として,1)比較的粗大なW_2C析出物が破壊の起点として作用,2)MA時の雰囲気として用いた残留Arガスの効果が考えられた。また,照射脆化の改善のためには,照射によるW_2C析出の抑制が必要なことがわかった。そこで,これらの要因を排除するために種々の作製方法を試みた結果,成形法としてはHIPよりも,あまり加圧せずに成形体を得る真空低加圧焼結法が有効であり,またMA時の雰囲気としては水素ガスがもっとも効果的で,水素ガスの使用はまた真空低加圧焼結時の高密度化にも有効であることがわかった。以上の結果および昨年度までに得られた再結晶脆化の改善に関する成果等に基づいて,Wの脆さ(低温脆化,再結晶脆化,照射脆化)の同時改善にもっとも効果的な,合金設計を含む具体的な作製方法を確立した。
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