研究概要 |
移動発生源から排出される窒素酸化物を還元無害化するシステムとして,貴金属触媒もより高活性で安価かつ環境負荷が小さい材料を用いる新しいシステムを検討し,鉄酸化物フェライトを反応性セラミックス材料として実験を行った。静止法によりマグネタイト,マンガン置換マグネタイト,ニンケル置換マグネタイトそして亜鉛置換マグネタイトと100%一酸化窒素を反応させたところ,いずれのフェライトは300℃において一酸化窒素の酸素を固相に剪り込むことによって窒素へ還元する事がわかった。その反応速度は置換した金属イオンによって異なった事から、窒素酸化物還元反応性はフェライトに組み込まれる金属イオンの位置選択性が左右している可能性が見出された。次に,フェライトと1500ppmの一酸化窒素とを流通法により反応させ,その温度依存性について検討した結果,マグネタイトとニッケル置換マグネタイト及びコバルト置換マグネタイトとの反応により,一酸化窒素は100℃以上で80%以下に減少する事が分かった。この減少は250℃以下では吸着,それ以上では還元反応によって起こる事が分かった。また,マグネタイトは350℃以上で高反応性を示したのに対して置換マグネタイトは350℃以上では殆ど反応しない事が分かった。このフェライト材料の,より環境負荷が低い製造プロセスについても検討した結果,従来65℃以上の加熱が必要であった湿式法が,pHや溶存酸素濃度を制御する事によって室温でも可能であり,かつ,微粒子が得られる事が見出された。この新しい合成法を組み合わせる事によってより高い反応活性を有するフェライトの合成が期待される。今後は室温合成によって得られたフェライトを用い,窒素酸化物還元に及ぼす置換金属イオンの効果と表面状態の影響について検討する。
|